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未来型クリニックをデザインする トリートメントコーディネーターの仕事と可能性について

90%を超えたリコール率. その最大の理由とは?

日本アンチエイジング歯科学会誌(Vol.7 2014)に「トリートメントコーディネーター導入で未来型クリニックをデザインする −90%を超えたリコール率、その最大の理由とは?−」より抜粋。(著者:鈴木誓子)

法律の視点からも不可欠なカウンセリング

患者に対する説明やカウンセリングは, 「別にしなくてもよいが, 親切心やサービスとして行う」というものではない。その根拠として, 医療法1条の4第2項には, 「医師, 歯科医師, 薬剤師, 看護師その他の医療の担い手は, 医療を提供するに当たり, 適切な説明を行い, 医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」と定められている。また, 厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日)で示された指針おいては, 医療従事者が患者に対して説明すべき事項として7つの項目をあげている。その中には「代替的治療法がある場合には, その内容及び利害得失」「手術や侵襲的な検査を行う場合には, その概要(執刀者及び助手の氏名を含む), 危険性, 実施しない場合の危険性及び合併症の有無」などが明示されている。

これらの法律や指針にもとづいた医療を行うには, 保険治療による治療方法だけではなく, 例えばファイバーコアのように, より長期の予知性に優れる自費治療の方法があるならば, その方法とメリット・デメリットも説明する義務があると解釈されるべきであろう。

患者への説明が争点となった2014年7月の判例を紹介する。2012年8月、インプラント治療による人工歯が抜け, 新メニューの試食ができなくなったとして, 大手持ち帰り弁当チェーン「本家かまどや」の社長が, 神戸市の男性歯科医に慰謝料などを求めた訴訟があった. 判決は「同席した助手らのメモによると, リスクも説明している」「説明や治療の際, 歯科医に著しい注意欠如があったとはいえない」として, 請求は棄却された。このケースではリスクを説明したメモが存在したため請求棄却となったが, 患者への説明が不十分であれば, 訴訟を起こされて敗訴するということも現実的に起こりうることを示唆している。

臨床現場での現状と、トリートメント・コーディネーター導入がもたらす変化

保険制度という制度面での問題もあり, これまで歯科治療サイクルにおいては, 患者にとってベストプランとなる治療計画の説明・提案が十分に行われていなかった。その結果, 保険診療を主体とした対処療法を主因とするう蝕の再発, 悪化, 歯の喪失が患者のQOLを低下させていた一つの要因であることは否定できないだろう。また, 自費診療を提案する際に, 医療者側の根拠の無い判断基準により, 一部の患者に対してのみ, 自費での治療を提案している医院も少なくない。さらに, 「予防」への取り組みが重要とは叫ばれながらも, 臨床現場で行う予防措置はPMTCだけ, というのが多くの医院における実態ではないだろうか。

わたし自身が5年にわたり, のべ約3,000人の患者に対してカウンセリングを行ってきた経験からは, 十分な説明と医療者の診断・治療能力があれば, 適切な治療介入を行うことができ, 患者の健康寿命の維持にも貢献できると考える。また, M. ポーター1)は「情報を持った患者の方が良い判断をし, お勧めの生活習慣や治療法に従うことが多い」と指摘している。

わたしが勤務した歯科医院では, 2009年より, 全ての患者に対し初診時にカウンセリングを行うシステムを構築した。必要な情報を適切に提供することにより, 患者の自身の口腔内への理解が高まり, 一生涯にわたり健康な口腔を維持することへの動機付けを生み出すことができた。その結果, 経営面では, 売上が1年で2. 15倍に, 自費を選択する患者の割合が約80%にまで増加した。また, 患者満足度を示す一つの指標とされるリコール率は20%から90%以上に増加した。このことは, 十分な説明を行うことにより, 患者・医院双方に利益をもたらすことを示唆するものである。

コーディネーターの仕事とは

トリートメント・コーディネーターは, 歯科医師と患者との間に立って処置の説明やカウンセリングを行う職種のことである。

患者が歯科医院に求める理想としては, 痛い歯をなんとかしてほしい, 費用はかけたくない, 痛くない治療方法で, できるだけ短期間で, 長持ちするようにしてほしい, 家から近い歯科医院で, などの声が多く聞かれる。これに対し, 歯科医院側が考える理想の歯科医療は, 保険より自費を増やしたい, 忙しい診療に追われることから解放されたい, たくさんの患者に支持される医院になりたい, リコール率を上げたい, などが多いだろう。ここからは, 患者側のニーズと医院側のニーズの間にズレや隔たりがあることが考えられる。また, 医療はその性格上, 専門性が高い分野であり, 患者が望むことが全て正しいとはいえない。それゆえ, 歯科医院側が患者に対し説明やカウンセリングを行うことによって, 患者に現状を認識させ, それに対する理想を提案することで, 認識のズレや隔たりを解消し, 悩みや不安を希望に変えさせることが求められる。つまり, 適正な情報を提供することで「自分の健康のためにベストとなる医療を享受したい」という「Wants」を患者の側に作り出すことが, 医院および患者双方にとって良好な結果をもたらすことになる。患者の理解度と満足度を計りながら, 必要に応じて情報をわかりやすく伝えることは, 医療者と患者の間にある情報の非対称性を緩和することになる。その役割を担うのがトリートメント・コーディネーターなのである。

このように, 医療そのものに関する知識はもとより, 様々な制度の理解や, 患者の心を理解する上では心理学的な知識が必要とされるなど, トリートメント・コーディネーターには高い専門性が要求される。

実際のカウンセリング

実際のカウンセリングは図5のように行っている。初診時に行うのが初診カウンセリングである。初めて来院した患者に対し, 患者側の主訴・意見・心の声を十分に聴き, 受け入れ, 改善することを約束し, そのために必要な診断が行われる。そして, 口腔内で起きている現状を理解していただき, 理想の治療を提案する。わたしは患者に対する傾聴を重視しており, うなずき, メモをとり, 同調すること, そして8割聴いて自分が話すのは2割, を心がけている。

次に, 初診カウンセリングにおいてよく見られる失敗例を以下にあげる:

  • 患者の声を聴く前に答えを出そうとする
  • カウンセリングシートに基づき, ただ単調に聞き取りを行うだけ
  • 一方的に自院の自慢をする
  • 患者が以前に受けた治療を否定する
  • 患者の目を見ない, 笑顔がない
  • 間が多い

これに対し, 筆者が成功パターンと考えるのは以下のカウンセリングである:

  • 今までの歯科経歴を上手に聞き出すことができる
  • 応急処置希望の患者にもフルマウス治療を提案することができる
  • このカウンセラーはセルフマネジメントができており信頼できる人物である, と患者に感じてもらえる
  • 初診カウンセリングの時点で予防に通うことを約束してくれる
  • 「こんな歯医者さん初めてです. ここに来てよかった」と感動してもらえる

実際のカウンセリング時に必要とされる資料は以下の通りである:

  • パノラマ・デンタル・CTなどのX線診断
  • 口腔内写真9枚法
  • ドクターの診断書
  • 歯周病検査結果
  • 歯列模型

ケース紹介:ご主人のインプラント治療への猛反対が夫婦愛に変わった瞬間

男性患者(来院当43歳)のカウンセリング事例を紹介する。歯科医師による診査診断の結果ではインプラントが合計3本必要であり, インプラントの重要性をお話した。本人は希望したが, 奥様が治療費用を知って猛反対した。そのため, 本人はいったんは希望したもののインプラント治療をあきらめた。そこで, 奥様を連れてくるように依頼したところ, 奥様が医院に怒鳴りこんできた。「売上至上主義の歯医者」などの暴言を吐かれた。この奥様を落ち着かせて, 本人に行ったのと同じカウンセリングを奥様にも実施した。奥様は次第に静かになり, カウンセリング終盤になると, 「今までうちの主人はずっと歯を食いしばって家族のために働いてくれていました。その食いしばる歯がなくなるのはね」と態度も軟化し、治療を認めてくれた。これまで専業主婦として一度も働いたことのなかった奥様が「鈴木さん, 主人に歯を作ってあげてください。私, 人生で初めて働きに出ます」と決意されたのだ。その後, ローンを組んで治療を開始することとなった。一番驚いたのは本人だった。「妻にわたしのことをこんなにも考えてもらえたことが何よりうれしい」と言ってくれた。

歯科医療を通して家族愛を再確認させ, 絆を強めることができた瞬間であった。日々のカウンセリングにおいて患者と接する際には, 当人だけでなく背後にある家族などの存在も視野に入れることが患者のQOLを最大化する上では欠かせないことを示唆する事例である。

自費を希望しそうな患者にしか説明しないのは差別であると考える。決して優しさや親切ではない。誰もが適切な情報を提供されればベストな治療を望む。全員カウンセリングとベストプランの提案を心がけ続けることで, その結果は経営上の数字にも反映される。わたしが以前勤めた医院ではリコール率90%を達成することができた。数字を追い求めているだけでは, このような結果は困難だっただろう。経営管理と患者に寄り添うことの両立がカギとなる。

最も大切な能力は「雑談力」

者の本当の悩みや今の症状に至った様々な背景・要因などを聞き出すことは医学的に大切であるが, 直接的な質問だけで患者から全てを聞き出すことは現実的には困難である。そのため, 心理学的な観点から, 雑談を通して患者から情報を引き出す技術が求められる。全顎的, 全身的に診るのはもちろん, 社会的なバックグラウンドや生活習慣など多面的に診断を行う上で, 様々な情報を引き出す技術は欠かせない。

このようなカウンセリングを行うことで, 保険診療の医院に多く見受けられるような, 歯1本だけ, 痛みを無くすだけ, といった対処療法的な治療から, フルマウスで, より審美的な, より長期的予後に優れた, 根本的な治療へと移管することが可能となる。

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